今回は賃貸物件の入居者で解約を考えている方に向け、原状回復とは何か、どんな事を行うのか、本当に支払うべき費用なのかを客観的に解説したいと思います。
原状回復は誰もが退去する時に不安になります。
理由は傷や汚れをつけてしまい、高額な請求をされるのではないかと心配になるからです。
実は国土交通省の発行する「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」というものが存在します。
何故ガイドラインが存在するのか。
それはこのような疑問や高額請求によるトラブルが実際に多い為、国土交通省から発行されたのです。
この記事はこんな方におすすめです。
- 退去立会はどんな事をやるの?
- 原状回復ってなに?
- フローリングに傷をつけてしまった
- 壁に大きい穴を空けてしまった
- 契約書を見てもよく分からない
- 敷金が戻ってくるのか知りたい
- 原状回復費用の相場を知りたい
結論
原状回復工事とは、借りた時の状態(原状)に戻す(回復)作業(工事)
最低限の原状回復は借主の義務
敷金は「基本返金される。返金されない場合もある」
自己紹介
mai
賃貸一筋20年の宅地建物取引士。
賃貸業務一連の実務経験有り。
現在は年間約200本の賃貸借契約がメイン。
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常識から逸脱する行為は、事例として紹介することはありますが推奨はできません。
また、筆者の経験から派生した主観が含まれます。
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この記事を読むと得られる事
- 賃貸動向と実情の把握
- 賃貸知識と知恵の習得
- 取引の疑問と不安解消
- 判断力、対応力の向上
原状回復とは退去後の修繕
原状回復とは、簡単に言うと「賃貸物件を退去した後に実施する修繕」を指します。
原状回復工事とは、借りた時の状態(原状)に戻す(回復)作業(工事)となります。
原状回復を実施する理由は「次の入居者に貸し出しをする為」です。
皆様が退去される時は、原則退去立会というものが行われます。
立会後は原状回復費用として修復費用が入居者に請求される為、トラブルに発展してしまうケースがあるのです。
原状回復の対象となる主な項目は下記の通りです。
- ビニールクロス(天井・壁)の張替
- フローリングの補修、張替
- カーペットの張替
- クッションフロアの張替
- 畳の表替え
- 襖の張替
- 設備(エアコン、洗面台、キッチン等)の交換
- ハウスクリーニング等
賃貸物件は退去ごとに原状回復を実施する事が一般的です。
支払う必要は有る
結論から言うと、借主は破損個所の修繕費用とクリーニング代は支払う必要が有るでしょう。
基本的には契約書に明記されています。
原状回復は借りていた人が実施してほしい内容ではなく、貸していた人の都合で実施します。
そこで論点となるのは、原状回復はなんで私が払わなければいけないの?という事です。
貸していた人からすると、契約書に書いてあるし、納得して入居しているはずだ。
そもそもあなたが汚したんだから払うのが当たり前でしょ、あなたが綺麗に使っていればこんな事にはならなかったのに、という主張となります。
借りていた人からすると、住んでいたのだから汚れて(傷がつくのは)当然だ。
消費者に不利な契約だ、家賃や管理費等もきちんと払ってきたし、修復費用は支払う払う必要はないのではないか、という主張となります。
貸主、借主どちらの言い分もわかりますが、実はこの敷金を巡るトラブルが絶えない為、国土交通省によりガイドライン「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」というものが作成されています。
そしてこのガイドラインでは、基本的に借主の保護の要素が強い為、後者が正しいという見解になり得るのです。
要するに、全額は支払う必要はないよって事です。
なぜかというと「減価償却」や「自然損耗(通常損耗)」に該当する部分は、貸している側が負担すべきとの考え方があるからです。
例えば、畳、クッションフロア、カーペット等の家具跡や、照明器具の跡、エアコン撤去後の穴などは、基本的に支払う必要はないと考えられます。
また、フローリングのワックス剥離などは、高額となる場合がありますが、クリーニングの範囲内と考える事もできます。
かといって請求された費用は全て払わなくてよいかといったら、それも違います。
過失による破損等の修繕は、ガイドラインに基づき、きちんとお支払いしましょう。
ただし通常使用の範囲を超えるもの(ゴミ屋敷)などは、満額負担となりうるのでご注意ください。
ガイドラインは存在するものの、賃貸借契約書には細かく修繕の項目が記載されており、全ての契約書がガイドラインに沿って作成されているわけではありません。
各項目で該当する箇所がある場合、実際には貸している人の主張を優先し費用が請求されます。
特に、フローリングの傷みが激しい場合や、タバコのヤニ汚れによる壁紙の張り替え、設備や建具の破損などがあると、高額請求となる傾向にあります。
当然減価償却や自然損耗について契約書に記載がない場合もあります。
そのような箇所を請求された場合には、まず調整できないか相談する事をお勧めします。
ガイドラインに記載されている項目は最低限支払う必要があります。
原状回復費用の折り合いがつかない場合、少額訴訟となります。
少額訴訟はほとんどが示談となり、お互いが歩み寄る形で折り合いをつけます。
この場合もクリーニング費用や破損個所は、借主負担となる可能性は高く、実際の事例としても存在します。
よって、このような事情から冒頭の結論に至ります。
手間暇を考えると、ここまでする方はほとんどいません。原状回復の項目はきちんと確認をしてから、契約する事をお勧めいたします。
原状回復の範囲は?
原状回復費用を支払う必要がある、と判断され納得した場合でも、負担する部分や割合も確認しましょう。
仮に壁紙に傷をつけてしまったとしても、裁判所ではその箇所のみ借主の負担義務がある、と考ます。
例えば壁に傷をつけてしまった場合、壁紙全ての交換費用を請求される場合があるのですが、基本的に傷の箇所以外は負担する必要はないと考えられます。
その傷のせいで交換する必要があるかもしれないが、それは貸主の都合だよね、って事です。
ちなみにですが、多少の傷は補修しても良いかもしれません。
例えば壁や床の傷はホームセンターでも補修剤が販売されています。
傷や穴を埋めるだけでも、数万円負担が軽減する、なんてことも可能性としてはあります。
たとえば壁紙の張替えが借主の負担となった場合であっても、全額負担する必要はありません。
実は負担割合という考え方が存在します。
負担割合は減価償却を考慮し設定する必要があり、おおよそ6年で内装材の価値は底値となりますが、価値が0となる事はありません。
例えば3年くらい住むと、半額負担といった感じの請求になります。
こちらもガイドラインに記載があるので、入居年数をしらべ負担割合を確認してみましょう。
昔は貸し手市場であった事もあり、原状回復費用は全額借主負担、なんていう契約も数多く存在しましたが、現在は供給量も増え借り手市場となりました。
消費者保護の観点や時代の変化とともに法整備が進み、契約内容も変化し、最近では昔のような契約は減少しましたが、少なからず名残りもあるように感じます。
また地域性や慣習のような考え方もあるので、本記事は参考にしつつも柔軟に考え応対していただく事をおすすめいたします。
原状回復費用の詳細
相場はズバリ賃料の1か月分。
ただし、貸主や管理会社、入居年数や汚損破損の状況により、大きく異なる為くれぐれもご注意ください。
様々な物件で積算していて感じるのは、経年変化や自然損耗などを差し引き平均すると1ヶ月前後ではないか、という印象です。
当然1ヶ月分に満たない方や、2ヶ月、3ヶ月分必要な方もいらっしゃいます。
経験上の感覚値となります。
目安となりますが、メインはこの2つ「クリーニング1,000円/㎡、クロス張替え1,000円~1,500円/㎡」といったところです。
不動産屋や管理会社により異なります。
例えばこんな感じです。
- 1K・専有面積 25㎡
クリーニング代25㎡×1,000円 → 25,000円 - 壁クロス 1面張替 20㎡×1,000円 → 20,000円
壁クロス 減価償却 50%負担 10,000円 - 25,000円+10,000円 → 合計 35,000円
この費用は敷金から差し引かれ、余りがあれば返金されます。
使用状況によっては敷金以上に請求がかかる場合や、少額の場合は返金となる場合もあります。
高額な請求の場合、トラブルとなる確率があがります。
通常原状回復は退去立会といって、管理会社の担当者が部屋に訪問します。
訪問し見積金額を提示するのですが、高額となってしまう場合があり、特に想定していない入居者はトラブルに発展する事が多いです。
そして高額となる要因としては、特殊な作業が伴う事が多いです。
特殊な作業とは建材関係の補修や交換、設備破損による修理、交換等。
最近はクリーニング代が前払いとなっている物件もある為、クリーニングにかかわるトラブルは減少傾向ですが、その他の高額な修繕費用が請求される場合があります。
やはり契約時にしっかり確認し、問題ないと判断したのであれば、退去時までそれをきちんと記憶(記録)しておく事が大事かなと感じます。
入居者によっては一銭も払わないという方もいます。
このような方は少額訴訟となる場合がありますが、手間も時間も費用もかかる為、どこかで折り合いをつけ、妥協する事も必要かなと感じます。
訴訟に発展した場合も基本的に0円という事はなく、痛み分けの示談となるケースがほとんどです。
事前対策
立会後に請求金額を下げる事は、交渉次第となりますが難しい場合があります。
事前に対策を実施しましょう。
対策は事前に綺麗にしておく事です。
特に壁紙の張り替え費用が大部分を占めます。
逆に壁紙は傷や汚れがなければ、張り替え費用の請求はありません。
事前にクリーニング業社等へ依頼し、傷は補修し、汚れは落としてしまいましょう。
荷造り、梱包作業はギリギリまで耐える方が多いです。
引っ越しの荷物はこまめにまとめ、不用品は処分をしましょう。
退去時に家財を残していくと、高額な費用を請求される場合があります。
事前に粗大ごみに出すか、リサイクルショップなどを活用しましょう。
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引っ越し業者でも不用品回収のサービスがあります。
また、自転車やバイクを忘れる方も意外と多いです。
きちんと移設し、置いていく事の無いよう注意しましょう。
使用していないバイクは、この機会に処分するかバイク買取を依頼しましょう。
意外と多いエアコンの残置物。
エアコンをご自身で設置した場合、原則は撤去する必要があります。
エアコンを残していくと、退去時に割高な撤去処分費を請求される場合があります。
引っ越し先にエアコンが必要なければ、エアコンを設置したままで良いか管理会社に相談しましょう。
また、エアコンの脱着や移設作業は、引っ越し業者を経由しても割高となります。
エアコンの設置や移設は、専門業者に直接依頼をしましょう。
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まとめ
原状回復工事とは、借りた時の状態(原状)に戻す(回復)作業(工事)
最低限の原状回復は借主の義務
敷金は「基本返金される。返金されない場合もある」
結論、敷金は「基本返金される。返金されない場合もある」
基本的に部屋を見るまで分からず、退去時の状況による、という事です。
原状回復の取り決めは、管理会社や貸主の考え方(賃貸借契約書)により様々です。
契約内容は入居する時にきちんと理解し、お世話になる物件を大切に使用し、お世話になった物件との思い出を大切にしてください。
どうしてもお金が絡んでくる部分なので、難しい部分もあるかもしれません。
大家さん、管理会社と、気持ちよくお別れできる事を願っています。
ではまた。