入居後に不具合を発見した、不具合が多すぎる、掃除がされていない、等感じる方も多いのではないでしょうか。
実は入居後の不具合のお問い合わせは比較的多い、と言う事ができます。
なぜなら賃貸物件は使用状況や清掃業者、貸主の意向によっても、大きく引き渡し状況が変わってしまうからです。
特に2月あたりから3月末に向け、一年の中で最も引っ越しは集中します。
この時期は引っ越し後の不具合やトラブルなどの問い合わせも最も多い時期となります。
この記事では、そんな物件に引っ越してしまい悩んでいる、どうしたら良いか分からない、といった方に向けアドバイスをしたいと思います。
結論
- 写真を撮り報告する
- 生活に支障があるものは修理、交換
- 生活に支障がないものは記録
- 対応に問題がある場合は責任者へ相談
- 内覧時に指摘をしておく
- 傷汚れはある、と心得る
自己紹介
mai
賃貸一筋20年の宅地建物取引士。
賃貸業務一連の実務経験有り。
現在は年間約200本の賃貸借契約がメイン。
「満足度の高い取引の達成」を目指しましょう。
このサイトは、コンプライアンスを重視します。
常識から逸脱する行為は、事例として紹介することはありますが推奨はできません。
また、筆者の経験から派生した主観が含まれます。
ご意見、ご質問などお気軽にコメントください。
この記事を読むと得られる事
- 賃貸動向と実情の把握
- 賃貸知識と知恵の習得
- 取引の疑問と不安解消
- 判断力、対応力の向上
それでは細かく見て行きましょう。
引越し前にチェック
契約が終わり鍵の引き渡しを受けたら、まず室内を確認しましょう。
引っ越し前は細かい採寸を行ったり、害虫駆除(バルサン)をしたり、水回りのコーティングをしやすい状況です。
室内の不具合をチェックもしやすく、引き渡し直後の部屋は責任の所在が明確な状態である、と言えます。
必ず室内チェックをしましょう。
時間が無い場合は引っ越し時、荷物搬入前に確認しましょう。
主な不具合
入居後は様々な不具合や、気になる点が少なからずあると思います。
実家の部屋では気にならなかった汚れや傷は、借りた部屋では気になるものなのです。
最も多い問い合わせは、汚れている、傷がある、です。
- フローリングの傷、凹み
- 壁紙の傷、汚れ、剥がれ
- 建具や建材の傷、汚れ
- キッチンが錆びている、油汚れが残っている
- 浴室のパッキンに黒カビ
- トイレの汚れが落としきれていない
これらの相談は比較的多いと言えるでしょう。
基本的に汚れや傷は生活をする上で、支障はないと判断されます。
支障がないと判断された場合、そのまま使用してほしい、というのが賃貸の基本であると言えます。
退去毎に新品へ交換していると、賃貸経営自体が成立しなくなってしまうからです。
掃除をして落ちない汚れ以外の、明らかに掃除をしていない箇所は指摘をしましょう。
次に多い項目としては設備の破損、故障です。
- 水が出ない、水漏れしている
- お湯が出ない
- 電気が点かない、使えない
- エアコンが動かない
- 鍵が開かない
- ウォシュレットが動かない
- テレビが映らない
これらは基本的には支障があると判断されます。
後述しますが発覚したら、すぐに管理者へ連絡しましょう。
不具合が発生する理由
通常引き渡し前は管理者による点検を行います。
では何故こういった不具合が発生するのでしょう。
作業項目が膨大にある(前入居者の使用状況が悪い)場合は、全てを改善する事は難しいと言えます。
100箇所修理が必要な場合、90箇所程度しか気付く事ができない事がある、といった感じです。
シンプルに作業者の見落としが考えられます。
見落としは以外と多いです。
見落としの理由は以下の事が考えられます。
- 時間がなかった、時間をかけなかった
- 意識が低い、チェックが甘い
- 担当者の経験が浅い
- 気付きにくい、発見しにくい箇所
担当による為、理由は様々です。
担当者や作業者により仕上がりのレベルは異なります。
点検が不十分な場合があったり、クリーニング業者や内装業者の質が悪かったりする場合もあります。
実際に生活をしてみないと気づけない項目もあります。
例えば基本的に管理会社はガス機器の点検を行いません。
前入居者からの報告がなければ、気付くことは難しいです。
分かっていても意図的に是正をしない場合があります。
中古である以上、全ての部材が劣化している為、当然全てを新品にする事はできません。
貸す側としてはそもそも完璧に仕上げようと思っていないのです。
賃貸経営をする以上、収益を確保する必要があります。
その為には生活に支障が無い状態であれば、そのまま使用してもらう事となります。
例えばフローリングの傷は通常損耗として捉えられる事が多く、よほどの傷や汚れがない限り、貼り替える事は少ないと言えます。
その他生活に支障が無いと判断される部材や設備は基本的には現況優先といって、そのまま使用する事が多いでしょう。
完璧を求める場合は、新築物件に住むしかないかもしれません。
引っ越し業者やご自身で傷や汚れをつけている場合があります。
確率は低かもしれませんが、点検時は問題なかった設備が、引き渡し直後に故障した、といった事例もあります。
不動産屋は修繕内容を記録しています。
ご自身で傷や汚れをつけてしまった場合は、素直に申告しましょう。
引っ越し時は傷や汚れがつきやすい為、注意しましょう。
不具合を発見したら
ではこういった不具合を発見したら、どうしたら良いでしょう。
不具合が多すぎて、怒りやストレスを感じる事もあるかもしれません。
逆にそのまま生活する事もできてしまう些細な不具合もありますが、どちらにしても必ず管理者へ連絡しましょう。
まず行う事は写真を撮る事です。
これが何よりの証拠となり、今後の修理費用の負担を左右する事になります。
退去時に高額な費用を請求される場合があるので、こちらも確認しておきましょう↓
原状回復ってなに?ガイドラインや負担割合、敷金は返ってくる?について解説。報告のタイミングによっては、あなたの負担になってしまう可能性が生じます。
写真があると対抗できる可能性がぐんと上がります。
部屋探しで活躍してもらったiPhoneに、ここでも活躍してもらいましょう。
写真撮影後は、必ず管理者へ報告しましょう。
管理者とは通常管理会社が一般的ですが、自主管理と言って、管理会社に依頼していない大家さんもいます。
この辺の仕組みはこちらの記事を参考になさってください。
大家さんとは?大家の資格は?管理会社、仲介会社との関係を解説。必ず重要事項説明書の中に「管理の委託先」という項目があるので、確認をしておきましょう。
傷汚れに関しては、状況の報告がメイン、設備の不具合に関しては改善してほしい事を必ず伝えましょう。
連絡を入れると管理者から、記録か修理(交換)等の回答を得る事ができます。
通常、軽微な傷、汚れに関しては、記録を残しそのままの使用を促される事が一般的です。
あまりにひどい場合は再度清掃作業をしてくれる場合もあります。
設備の不具合に関しては、基本的に修理や交換の手配となります。
例えばエアコンが動かない、といった場合はメーカー修理を手配してくれたり、新品のエアコンを設置(目安7〜10年)してくれる場合もあります。
自身で破損させてしまう方もいらっしゃいます。
正直に管理会社へ報告しましょう。
軽微な破損で、修理が不要なレベルであれば、報告がなくても大きな問題にはなりません。
ただ設備関係の破損は、契約時に加入した保険で修理できる場合もあるので、報告をする事が望ましいと言えます。
賃貸の火災保険、加入しなくても良い?保険料の相場や自分で加入する方法についても解説。また、その場で報告をしなかったとしても、退去時に破損箇所の請求をされる場合があります。
対応が悪い場合、責任者へ相談
望み通りの解答(修理、清掃の実施)を得られない場合があります。
お金と手間がかかるからです。
貸主や管理会社としては、その状態で使用してほしいのです。
修理業者やクリーニング業者の手配や、作業はできるだけ避けたいところでしょう。
とはいえ賃料を支払う以上、貸主にはまともな状態で提供する義務があります。
使えない設備は賃料の減額を主張する事ができます。
誠意ある対応をしてくれない場合は、別の担当や責任者に相談し解決してもらうようにしましょう。
内覧時の指摘は有効
内覧時に傷や汚れ、不具合を発見する場合もあります。
この場合は契約前に修繕が可能か確認するようにしましょう。
経過年数にもよりますが、タイミングによっては、フローリングを張り替えてくれたり、エアコンを新品にしてくれる場合があります。
申込前というのは交渉を行う絶好のタイミングです。
賃貸物件、交渉のコツは?家賃交渉、初期費用や月額費用、条件、タイミング等の交渉術を伝授。仮に要望が通らなくても家賃を引いてくれたり、別の部分で割引をしてくれる場合もあるかもしれません。
苦手な方も多いかもしれませんが、是非交渉をしてみましょう。
逆に申込後や入居後は交渉は成立しにくい、と言えます。
傷汚れはある、と心得る
基本的に賃貸は、新築で入居する割合は低いです。
逆に言うと流通しているほとんどの物件が「中古」という扱いになります。
中古である以上、完璧ではありません。
設備や内装は劣化し、少なからず傷や汚れがあるでしょう。
新築であっても人が行う作業であり、人の出入りがある以上、傷や汚れは避けられません。
賃貸物件において、傷や汚れに憤慨し、頻度が多すぎたり、細かすぎたり、むやみに話を大きくしたりする事はお勧めできません。
そのような言動は記録され、いわゆるクレーマーとして捉えられてしまう可能性があります。
将来的に不利になってしまう場合もあるので注意しましょう。
契約はお互いの信頼関係で成り立ちます。
信頼関係が崩壊した場合、契約の継続が困難であると判断されてしまう場合もあるのです。
自分でも作業をする
賃貸物件では実施しない作業がいくつかあります。
自身で作業、もしくは専門業者に依頼しましょう。
作業のタイミングは「引越し前」または「入居直後」です。
バルサンの目的はゴキブリ等の虫駆除です。
バルサンは寝具、食器、電化製品、衣類等に触れてはいけません。
収納も全開にし、必ず引っ越し前に実施しましょう。
また、賃貸物件には火災報知器が設置されています。
火災発生を知らせる為の機器で、煙や熱に反応します。
煙タイプのバルサンは、火災報知器が反応してしまう可能性があります。
おすすめはバルサンプロEXノンスモーク霧タイプ。
熱も煙も発生しない為、火災報知器に養生をする必要がありません。
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ガス警報器は反応する場合があります。
風呂釜洗浄(追い焚き配管)はハウスクリーニングでは実施しません。
追い焚き配管は浴槽の水を循環させる為、使用すれば確実に汚れます。
前の入居者が作業していない場合、何年も清掃されていない可能性があります。
汚れた配管を通過したお湯が直接肌に触れる事になるのです。
ご自身で風呂釜洗浄を行いましょう。
配管洗浄を実施すると、ドロドロとした茶色い汚れが出てくる事があります。
前入居者の汚れが気になる方、小さなお子様がいる方は必須の作業です。
ガスを開通した直後に必ず実施しましょう。
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プロへ依頼するとより確実に雑菌を除菌することができます。
予算に余裕のある方は、こちらもご覧ください。
エアコンの内部洗浄も任意となっている場合があります。
冷房を使用した場合、冷えた部分が結露する為、水滴を排出する必要があります。
水はドレンパンという内部の受け皿で受け止め、ドレンホースから外に排出します。
その水滴は拭き取る事ができない為、エアコンの内部には確実に雑菌やカビが繁殖しています。
管理会社でエアコンクリーニングを実施してくれない場合、ご自身で掃除をするか、専門業者を手配しましょう。
ご自身で実施する場合の注意は、基盤部分にスプレーしないことと、浮かした汚れを洗い流すことです。
市販のスプレーは汚れを浮かして終わりです。
きちんと洗い流しましょう。
基盤部分にスプレーをしてしまうと、故障や火災の原因となります。
くれぐれもご注意ください。
私が使用した中では、送風ファンと冷却フィン用のスプレー、すすぎ用のスプレーがセットとなっている、こちらのセットがお勧めです。
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より本気で取り組みたい方や、DIY好きの方は、より強力な洗浄用品をそろえましょう。
毎シーズンと考えると、コストパフォーマンスは高くなります。
プロ仕様の薬品(シルバーN)を希釈し、噴霧器で洗浄しましょう。
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専門業者に依頼する方はこちら。
最も手軽に確実にエアコンを綺麗にすることができます。
その他、キッチンや浴室、トイレ等のハウスクリーニングを依頼する事も可能です。
クリーニング後の再クリーニングはかなり綺麗になります。
ただし、退去時に費用が発生する為、クリーニング費用が重複します。
依頼時はご注意ください。
まとめ
- 写真を撮り報告する
- 生活に支障があるものは修理
- 生活に支障がないものは記録のみ
- 対応に問題がある場合は責任者へ相談
- 内覧時に指摘をしておく
- 傷汚れはある、と心得る
当然ですが入居中の不具合も同様きちんと管理者に報告をし、指示を仰ぎましょう。
コロナ禍では入室を避ける業者もあると言います。
このような場合もやはり記録を残す、という事は大事だと言えるでしょう。
少しでもお役に立てると幸いです。
報告は引き渡し直後のタイミングで。
ではまた。